痔の治療法について
痔の治療は症状や病状によって、外来処置と入院による手術を行います。以前は痔の治療のために長期入院と手術という考え方が浸透していましたが、現在では技術の進歩によって、肛門の機能を損ねないことを大前提とした治療法で手術もあまり行われません。ここでは痔の種類別「いぼ痔・痔ろう・切れ痔」によって行われる治療と手術についてみてみましょう。
入院期間
痔の治療や手術には、長い入院の期間が必要だと思っている人も多くいますが、痔の治療のために2週間以上入院するケースはほとんどありません。もちろん入院の期間は病状や手術の方法・回復の度合いによって異なりますが、約60%の患者さんは1週間以内の入院か通院治療で治ります。誤った思い込みは捨てて、入院については医師と相談すると良いでしょう。
いぼ痔の治療
外来処置では内痔核が進行して出血を繰り返す場合、患部に硬化剤を注射し出血を止める治療を施します。注射療法は痛みもなく、肛門も傷つけませんが効果は1年程度です。ただし治療を繰り返すと注射の効果が薄れてきます。
あくまで一時的な治療ですので、出血が止まった後もイボ痔の悪化を防ぐよう心掛ける必要があります。
いぼ痔の治療に用いられる方法で、小さな輪ゴムをはめ込み痔核の組織を壊死させて脱落させる「ゴム輪結紮療法」があります。ただしこの治療法に適した硬さや大きさの痔核だけが対象になります。
いぼ痔の手術
- 結紮切除法
- 結紮切除法は、いぼ痔に続く動脈を痔核の根元で縛り、放射状に切除する方法で、手術法としては最も一般的なもので世界中で行われています。手術にかかる時間は1ヵ所15分ほどで、入院期間は10日〜2週間ほどです。
- 半閉鎖術
- 半閉鎖術は、いぼ痔を切除した後の傷口を縫う手術です。これまでは痔核を切除した後の患部を縫合しないで開放したままでした。半閉鎖術では患部を丁寧に縫合するため傷の治りが早く、出血や炎症の痛みも少なくなります。
- PPH法
- PPH法とは1993年にイタリアで開発され、脱出する内痔核に対する手術法です。PPHという器具を使って脱出する余剰部分を釣り上げて切除と縫合を一瞬に行う治療法です。ただし副作用や効果については、未知数な点が多いため医師とよく相談したうえで手術を受けましょう。
切れ痔の治療
切れ痔と呼ばれる裂肛の初期治療では、生活指導や薬物療法など、なるべく肛門に負担をかけずに症状を和らげる治療が行われます。
しかし切れ痔が慢性化し、肛門上皮が傷つくのを繰り返している場合には、肛門の狭さと硬さを取り除いて柔軟な肛門の状態に戻すための手術を行います。
切れ痔の治療で用いられる薬剤には、ニトログリセリン軟膏に含まれている神経伝達物質の酸化窒素が、内肛門括約筋を弛緩させる効果を期待して行われ、慢性裂肛の約80%がこの方法で治っています。しかし、副作用として約40%の人に激しい頭痛が起こることから、最近ではこの治療法を見直す方向にあります。
切れ痔の手術
- 内括約筋側方皮下切開術
- 切れ痔の悪化により肛門狭窄になった場合は「内括約筋側方皮下切開術」といわれる治療を行います。狭くなった内括約筋の一部を切開して肛門を広げます。局所麻酔で手術を行い、約2分程度で終了します。別名「LSIS」とも呼ばれ、現在最も多く行われている治療法です。肛門が広がることによって切れにくくなり痛みが減少します。
- 皮膚弁移動術(スライディング・スキン・グラフト法)
- 皮膚弁移動術は、切れ痔が慢性化して傷口が潰瘍化した場合に行われる治療法です。裂肛が慢性化することで潰瘍から併発した肛門ポリープや皮膚痔を切除します。また肛門を切開し広げてできる傷口は、肛門のすぐ外側から引っ張ってきた皮膚と縫い合わせます。この外側からの皮膚が肛門内に移動していき、新たな肛門になるという手術を行うのです。
痔ろうの治療
痔ろうの初期段階である肛門周囲膿瘍の場合は、腫れている部分を切開して出口を作り、膿を出してしまえば腫れや傷みは治まります。
しかし痔ろうは、放っておくと肛門ガンになることもあるので100%手術になります。手術の方法には痔瘻のT型〜W型のタイプに合った方法で行われます。
痔ろうは、細菌感染から炎症と化膿を起こし肛囲膿瘍が悪化して膿の管ができる症状です。薬剤を使用する場合は、化膿の広大を防ぐために抗生物質や抗菌剤を投与し、痛みや腫脹には消炎鎮痛剤を使用しますが、痔瘻は薬では完全に治らないので、瘻管と呼ばれる膿の管を切開して排膿するか瘻管を切除する手術治療を行わなければ治りません。
痔ろうの手術
- 切開開放術
- 切開開放術は、痔ろうが皮膚の浅い所にある場合や肛門の後方にある場合に行います。この手術では膿の管を入り口から出口まで切り開いてすべて切除する方法です。術後は下から肉が盛り上がって治りますが、比較的に単純な手術で再発の恐れもほとんどありません。手術にかかる時間は約30分程度で1週間の入院が必要になります。
- 括約筋温存術
- 痔ろうが肛門の前方や側方・皮膚の深い部分にある場合に、括約筋を切ると肛門に変形が残ってしまったり、肛門の機能が悪くなることがあります。括約筋温存術では、膿の管を入り口と出口だけをくり抜いて切除する方法で、術後の後遺症に悩まされません。ただしこの手術は最も高度な技術を必要とします。手術時間は約1時間ほどで1週間以上の入院が必要です。
- シートン法
- シートン法は後障害も少なく根治性が高い、新しい痔ろうの手術治療です。この治療法は、一次口から二次口までの瘻管を医療用ゴムの弾力を利用して数週間から数ヶ月かけて徐々に切除していく痔ろうの手術療法です。長期間かけて瘻管の周りの組織を浄化しながら切開するので、一般的な瘻管開放術に比べて内外の括約筋へのダメージが軽減できる治療法です。また治癒率も優れているので現在、痔ろうの手術として広く行われている治療法です。